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教育機会の不平等 コロナ禍で浮き彫りに

2021年8月、新学期初日を迎えたスイスの小学校 Keystone / Francesca Agosta

経済開発協力機構(OECD)が今月公表した世界の教育に関するリポートによると、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)は、教育や職業訓練機会に不平等があることを改めて顕在化させた。この点、スイスも例外ではない。

このコンテンツは 2021/09/21 10:30

9月16日付け刊行の「図表でみる教育OECDインディケータ(2021年版・英語)他のサイトへ」で経済開発協力機構(OECD)は、パンデミックがもたらすリスクとして、とりわけ「既存の教育格差の拡大」を指摘している。同報告書は46カ国の教育制度を比較したもの。

スイスでは2020年春に実施された休校措置を巡り、勉強に集中できる場所がない、パソコンにアクセスできない、遠隔授業に出席しないといった不利な立場にある生徒らが、教育の網の目からこぼれ落ちることに対する懸念が高まった。

同報告書中のスイスに関する分析(カントリーノート)他のサイトへによると、スイスはパンデミック中このような生徒らの学習を支援するため、必要なデバイスを補助するなど追加的措置を取った国の1つ。

一方、こうしたリソースが、それを最も必要とする生徒に確実に行き渡るよう追加資金を投入した国には含まれていない。

スイスでは社会経済的地位が学業上の成果に大きく影響する、というのは以前からOECDが指摘し続けている事実だ。例えば、社会経済的地位が低い家庭出身の生徒は、アカデミックな進路よりも職業訓練の道を選ぶ傾向がある。また、外国生まれの成人は、就職市場で不利になりやすい。

「図表でみる教育」は、OECD加盟38カ国及びアルゼンチン、ブラジル、中国、インド、インドネシア、ロシア、サウジアラビア、南アフリカの教育制度を比較・分析した報告書。

2021年版では、教育へのアクセス、参加、進学に関する機会平等に加え、パンデミックの影響に焦点を当てている。また、後者について4度目の報告書となるOECD「State of Global Education; 18 months into the Pandemic(国際教育実態調査:パンデミック発生から18カ月)」も同時刊行された。

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短い休校期間

スイスが多くのOECD諸国と異なっていたのは、休校に対するアプローチだ。スイスでは、できるだけ対面授業を続けることが目標とされた。

これについてOECDのマリー・エレーヌ・ドゥーメ氏はswissinfo.chの取材に対し、「2020年、スイスで実施された休校の期間は、住民100万人当たりのコロナ感染率がOECD平均を上回っていたにもかかわらず、大半のOECD加盟国より短かった」とメールでコメントを寄せた。

「2020年の就学前・初等・前期中等教育課程における一斉休校期間は、OECD平均がそれぞれ44日、59日、65日であったのに対しスイスでは34日だった。後期中等教育課程のみ56日と長かったが、それでもOECD平均の70日を下回った」(ドゥーメ氏)

さらに「2021年になると、スイスの学校では全課程で対面授業が維持されたが、(OECDでは)各課程平均11~31日間の一斉休校期間があった」。

スイスでは2020年3月16日、全国一斉休校がスタートした。教育行政が州の管轄下にあるスイスでは、連邦政府がこうした措置を取ることは前代未聞。学校再開は、20年5月11日を皮切りに低学年から段階的に行われた

しかし、今年8月の新年度開始以来、生徒間のコロナウイルス感染が急増している。各州で方針が異なる中、推奨あるいは義務とする感染予防策は、集団検査だったりマスク着用だったりと学校によりばらつきがある。中には集団検査を中止した州もある。そのため連邦や州の方針に対する疑問や、学校で子供たちを守るためさらなる対策を求める声が上がっている。

低スキルほど失業しやすく

パンデミックが引き起こしたロックダウンや経済の制約、需要の変化は、経済と労働市場を混乱させ雇用にも影響を与えたが、ドゥーメ氏によると、スイスはこの点でも他のOECD諸国とは若干状況が異なり、雇用面で影響を受けた成人は高スキルよりも低スキルの人に多かった。

2020年の失業率をみると、25〜34歳の成人のうち最終学歴が前期中等教育課程まで(一般に15〜16歳で学業を終える)のグループでは前年から3.6ポイント上昇し13.4%に達したが、第3期教育課程(大学など)修了組ではあまり変わらなかった。

「スイスとは対照的にOECD平均では、前期中等教育課程までの修了者と第3期教育課程を経た成人の失業率の上昇幅はほとんど同じ(2ポイント未満)だった」(ドゥーメ氏)。

(英語からの翻訳・フュレマン直美)

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