Navigation

スイスは男女差別の国か 欧州裁からの違法判決多数

ストラスブールの欧州人権裁判所 © Keystone / Christian Beutler

スイスは欧州人権条約の批准を前に、女性参政権を急きょ導入する必要があった。そして批准以降、スイスは男女差別を巡り欧州裁判所から違法判決を受けることが際立って多い。

このコンテンツは 2020/12/25 06:00

今から70年前の1950年11月、欧州理事会はローマで欧州人権条約を採択した。これは人権保護のための最も重要な国際条約の1つとされる。

欧州人権条約に明記されている条項に関しては、ストラスブールにある欧州人権裁判所で争うことができる。同裁判所の判決には法的拘束力があり、条約加盟国には判決の履行が義務づけられている。

スイスは1974年にようやく欧州人権条約を批准した。批准が遅れた理由は、女性参政権が未導入だったことが挙げられる。女性参政権の欠如は男女差別と見なされていたことから、連邦政府は条約を批准する前に、まず女性参政権を巡る国民投票を実施しなければならなかった。

スイスが違法判決を受けた判例

スイスは他国に比べて欧州人権裁判所から違法判決を受けることは少ないが、いくつかの問題点を抱える。報道の自由の侵害、公正な裁判を巡る問題、難民申請を却下された人々の強制送還問題に加えて、男女差別を巡ってもスイスは度々訴えられている。原告には女性だけでなく男性もいる。

注目すべき判例を以下にまとめた(太字は欧州人権裁判所が問題と見なしたスイスの主張)。

シューラー・ツグラッゲン対スイス(1993年):「母親は働かない」

End of insertion

スイスの障害者保険は、女性は出産後に一時的であれ離職することはこれまでの経験則から明らかとの理由から、母親である原告の支給額を減額した。欧州司法裁判所はこれを差別的と判断した。

ディ・トリツィオ対スイス(2016年):「どうせ母親はパートでしか働かない」

End of insertion

先の判例からスイスは多くを学ばず、2016年には同じ争点でまた訴えられた。スイスの傷害者保険は、女性は育児を担うのでどのみちパートでしか働けないとの仮定の下、双子を出産した女性の部分年金を取り消した。欧州人権裁判所はこうした仮定も差別的と判断した。

ブルガルツ対スイス(1994年):「ダブルネームを持てるのは女性だけ」

End of insertion

スザンナ・ブルガルツという女性がドイツでアルベルト・シュニーダーという男性と結婚した。結婚後、女性はスザンナ・ブルガルツの名前を維持したが、男性はドイツの氏名権に基づきアルベルト・シュニーダー・ブルガルツに変更した。夫婦がスイスに移住すると、行政当局は姓をシュニーダーに変更した。そのためアルベルトはシュニーダー・ブルガルツと名乗ることはできなくなった。行政当局は、ダブルネームを持てるのは女性に限られるとした。

欧州人権裁判所は、スイスの氏名権における不平等な扱いについて、客観的かつ合理的な正当性がないと判断した。

その後、スイスの氏名権は全面改正され、ダブルネームは廃止された。

B対スイス(2020年):「女性は夫に養われることから、生涯にわたり寡婦年金を要する」

End of insertion

男性は妻の死後、2人の子供を1人で育て、寡婦年金を受給していた。子供たちが成人すると、寡婦年金は支給されなくなった。この男性が女性であれば、生涯にわたり寡婦年金を請求できる権利があった。

欧州人権裁判所は最近、この不平等な扱いが差別的であると判断した。判決はまだ確定していない。

(独語からの翻訳・鹿島田芙美)

このストーリーで紹介した記事

この記事にコメントする

共有する

この記事にコメントする

SWIアカウントをお持ちの方は、当社のウェブサイトにコメントを投稿することができます。

ログインするか、ここで登録してください。