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国連の人権機関が指摘、非合法の養子縁組と組織犯罪との関連性

1980年代、700人を超えるスリランカ出身の子供がスイスで養子になった。中には、非合法の養子縁組もあった Keystone / Rafiq Maqbool

非合法の養子縁組でスイスに連れてこられたスリランカの子供達に関する報告書には、人身売買と強制失踪との明らかな関連性が示されている――。国連の人権専門家オリヴィエ・ドフルーヴィル氏はそう語る。

このコンテンツは 2021/09/16 12:00
Dorian Burkhalter

ドフルーヴィル氏が副委員長を務める国連強制失踪委員会(CED)他のサイトへは5月、スイスに対し、1970年代から30年以上にわたって不法に行われたスリランカからの養子縁組を調査し、養子になった子供の中に強制失踪などの犯罪被害者がいないかを確認するよう強く要求他のサイトへした。また、スイスは被害者に補償を受ける権利を保証すべきだと述べた。

これらの勧告は、「強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約(強制失踪条約)」の履行状況を監視する条約機関である強制失踪委員会が、スイスに対して行った審査の結果、公表したものだ。スイスは16年に同条約を批准。スイスは来年5月7日までに委員会の勧告について報告書を提出する予定だ。

強制失踪と非合法の養子縁組

強制失踪とは、人を逮捕または拉致し、自由を剥奪(はくだつ)したことを認めない、あるいは被害者の安否や所在を隠す行為だ。この行為は失踪者を法の保護の外に置き、失踪者の家族に重い精神的負担を負わせる。

連邦政府は昨年12月、1970~90年代のスイスでスリランカ出身の子供が不法に養子縁組されていることを認識しながら防げなかったという当局の不祥事を認め、遺憾の意を表明した。詳細は、チューリヒ応用科学大学(ZHAW)が昨年2月に発表した経過報告書に記されている。同報告書によると、80年代、700人を超えるスリランカ出身の子供がスイスで養子になったが、中には非合法の養子縁組もあった。

連邦政府は非合法の養子縁組について、養子の出自調査を支援すると約束した。スリランカ以外の養子の出身国についても、養子縁組規則に不正がなかったかを別途調査する予定だ。また、専門家グループが現在の養子縁組制度について問題が残っていないかを調べる。

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ドフルーヴィル氏はswissinfo.chの取材に対し、委員会が子供の人身売買と強制失踪との関連性をどのように「初めて、非常に明確に」報告したか、その関連性が委員会の今後の活動にどのような影響を与える可能性があるかについて語った。

swissinfo.ch:委員会は何をきっかけに、非合法の養子縁組について審査することにしたのですか。

オリヴィエ・ドフルーヴィル:スイスの場合、私達はこの問題が委員会に提起されるとは予想していませんでした。スイスのスリランカ人養子の利益団体「バック・トゥ・ザ・ルーツ他のサイトへ」がNGOの権利として、スイスとの対話に先立ち委員会に報告書を提出しました。

swissinfo.ch:非合法の養子縁組が強制失踪とみなされたのはいつですか。

ドフルーヴィル:状況はさまざまですが、その中に、非常に懸念される状況で、強制失踪と重なる例があります。子供達を奪い取る事件が一定数あり、子供達の身元がその後改ざんされていました。子供を無理やり失踪させる、あるいは保護者自身が失踪している間に子供を盗むケースでした。また、強制失踪に遭った母親の産んだ子供が、母親と引き離され、不法に養子に出されるケースもありました。

産んだ赤ちゃんを拉致された女性の話はたくさんあります。母親は医療スタッフから赤ちゃんは死んだと聞かされましたが、遺体は確認できませんでした。実際には、赤ちゃんは盗まれ、スリランカの仲介業者に売られていました。その業者は赤ちゃんをスイス人家族の養子に出しました。自由を奪われた女性が強制的に子供を産まされ、子供を取り上げられる「ベビーファーム」の話もあります。また、スイスの仲介業者がスリランカ人の子供のスイスでの養子縁組をあっせんしたケースもありました。あっせんには、仲介業者は州当局の許可を得る必要がありますし、州当局の監視下に置かれます。連邦当局には州が出した許可に対して不服を申し立てる権利があります。

連邦内閣の報告書は、スリランカの首都コロンボにあるスイス大使館が80年代初めから、国際養子縁組を巡るスリランカでの不法な行為について報告書を送り続けていたにもかかわらず、州当局も連邦当局も非合法の養子縁組を防ぐ適切な措置を取れなかったと認めました。そこにはスイスの仲介業者が関わったケースも含まれます。

swissinfo.ch:委員会の指摘に対するスイス政府代表の反応はどうでしたか。

ドフルーヴィル:私達は、バック・トゥ・ザ・ルーツが委員会に提示した事実に基づいて、スイスにこの問題を提起しました。これに対し、スイスは事実を解明しようとする手続き(ルイス要請17.4181に対する連邦内閣の報告書)をすでに始めていると回答しました。また、非合法の養子縁組の中には、必ずしも全てのケースがそうだったわけではありませんが、条約上の意味での強制失踪に起因すると思われる例があることを認めました。私は、スイス当局がこの問題を非常に真剣に受け止め、さらに重要なことですが、被害者と緊密な協議を行っていると考えています。来年5月に予定されているスイスの委員会に対する報告では、良いニュースを聞けるのではないかと私達は期待しています。

swissinfo.ch:スイスは条約上、どのような義務を負っていますか。

ドフルーヴィル:条約は強制失踪の定義に当てはまるすべてのケースに適用されます。私達は連邦政府がルイス要請に対して報告書を採択したことを歓迎します。同報告書がスイスの失敗を認め、遺憾の意を表明したことに留意します。しかし、スイスが犯罪者を訴追し、被害者の補償を受ける権利を認める段階に進もうと考えているようには見えないことは懸念されます。ですから、スイスは、すべての締約国は犯罪者を訴追・処罰する義務だけではなく、被害者に補償を提供する義務も負っていることを思い起こしてください。また、被害者には真実を知る権利があり、締約国には真実を追求する被害者を、スリランカなどの出身国との協力を通じて支援する義務があります。スリランカも条約の締約国です。

国連強制失踪委員会の副委員長を務めるオリヴィエ・ドフルーヴィル氏 Christof Heyns

swissinfo.ch:今回のケースは委員会の今後の活動にどのような影響を与えるでしょうか。

ドフルーヴィル:委員会にとって明らかに新しい領域だと考えています。以前は非合法の養子縁組を別の文脈で考えていました。一般的に、アルゼンチンやフランコ政権時代のスペインのような武力紛争や独裁の時代には、何千人もの赤ちゃんが拉致され、体制のイデオロギーに従って育てられました。子供の拉致や取り上げは、北米や豪州のように、民間人に対する弾圧や、植民地時代や植民地独立後のジェノサイド(集団殺害)の中でも行われました。

私達は今、強制失踪という別のタイプの非合法の養子縁組に直面しています。それはむしろ政治的な動機がほとんど無い、あるいは全く無い組織犯罪とつながっています。とはいえ、時には政治的な動機による場合もあります。このような非合法の養子縁組が多くの国々を悩ませているのは明らかです。これらの行為は今では、一般的に国際私法や国境を越えた養子縁組(1993年採択のハーグ国際養子縁組条約)、子供の権利(国連の子どもの権利条約及び子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する選択議定書)、人身売買(国連の国際組織犯罪防止条約の人身取引議定書や地域的な協定)に関する規制というレンズを通して監視されています。

非合法の養子縁組という問題は、強制失踪によって新たな局面を迎えています。潜在的には非常に多くの被害者がいます。ですから、私達の任務はまず、(強制失踪条約とは)別の法的枠組みの下で活動する権限ある機関と緊密に連携することです。次に、すべてのケースが強制失踪の範囲に当てはまるわけでないことに注意する必要があります。そうは言っても私達の意見は被害者の真実を知る権利、正義を求める権利、補償を受ける権利を強化する上で大いに役立つと思います。また、家族から子供を盗み、国内あるいは海外に子供を売ることで利益を得ている犯罪者は、強制失踪が非常に重大な犯罪であり、一定の条件下では人道に対する罪にさえなりうることを知っておくべきです。また、拉致から失踪者の発見まで続くという意味では、継続犯罪でもあります。それゆえ、拉致の実行から何年も経って罰せられる可能性があります。

このインタビューは内容を明確にするため、編集・要約されています。

(英語からの翻訳・江藤真理)

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