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空気中のCO₂回収でスイスがまた一歩リード

スイスのスタートアップ「クライムワークス(Climeworks)」は、アイスランドに設置した装置で年間4000トンのCO₂の吸収を目指している Climeworks

スイスの企業「クライムワークス(Climeworks)」が、空気中の二酸化炭素(CO₂)を分離・回収して永久に貯留する世界最大の設備をアイスランドに設置した。地球温暖化対策には不可欠な技術だが、いくつかの疑問点も指摘されている。

このコンテンツは 2021/09/15 08:30

何十年もの間増え続けてきた世界の温室効果ガスの排出量が、ついに減少に転じたとしたら?

これが、大気中のCO₂を除去する技術「直接空気回収技術(DAC)」の世界的リーダーであるクライムワークスの望みだ。同社は、2017年にCO₂を回収・利用する商用プラントを世界で初めて稼働させ、気候中立(クライメイト・ニュートラル)に向けた新たなステージへの道を開いた。

そして今年9月8日、大気中のCO₂を取り出して地中に永久的に貯留する世界最大のプラント「オルカ(Orca)」を稼働させた。アイスランドのヘリシェイディ地熱発電所近郊に建設され、年間最大4000トンのCO₂を抽出できるという。この量は欧州の約600人のCO₂排出量に相当する。

▼世界最大のDACプラント「オルカ(Orca)」

その仕組みは?

大気中のCO₂は、クライムワークスが設計した特殊なフィルターで分離される。そしてアイスランドの企業「カーブフィックス(Carbfix)」が開発したプロセスにより、水と混ぜ合わされて深さ800~2000メートルの地中の玄武岩層に送り込まれ、数百万年にわたってそこに留まるとされている。

クライムワークスのクリストフ・ブトラー氏は、「圧力と水分、鉱物が組み合わさることで、CO₂が岩石に変化する。私たちは自然の鉱物化プロセスを加速させているだけだ」と説明する。カーブフィックスのエッダ・アラドッティル最高経営責任者(CEO)は、CO₂の95%が2年以内に岩石になると言う。

ブトラー氏は、地中から突然、制御不可能なガスが漏れる可能性はゼロだと断言する。「いったん岩石になったCO₂は、地震や火山の噴火が起こったとしても空気中に放出されることはない」

▼アニメーションで解説するクライムワークスのDAC技術

貯留に適した場所はまれ

CO₂貯留にアイスランドが選ばれたのには理由がある。地質条件が適していることに加え、同国は地熱エネルギー開発の最先端にある。オルカのような施設では、再生可能な資源を使用することが大前提だ。大気中から除去する量よりも、プラント稼働で排出する温室効果ガスの量が多ければ意味がない。

「地球温暖化は世界的な問題。どこでCO₂を除去するかは重要ではない。だが輸送コストをかけないためには、CO₂を永久貯留する場所で回収するのが賢明だ。だがそれに適した場所は地球上にあまり存在しない」とブトラー氏は説明する。

現在、世界15カ所でDACプラントが稼働しており、国際エネルギー機関(IEA)の2020年の報告書によると、年間9000トンのCO₂を回収できるという。また、カナダの企業「カーボン・エンジニアリング(Carbon Engineering)」は、年間100万トンのCO₂の回収を可能にする世界最大のDAC施設を米国で22年に完成させる予定だ。

現在、世界15カ所でDACプラントが稼働しており、国際エネルギー機関(IEA)の2020年の報告書によると、年間9000トンのCO₂を回収できるという。また、カナダの企業「カーボン・エンジニアリング(Carbon Engineering)」は、年間100万トンのCO₂の回収を可能にする世界最大のDAC施設を米国で22年に完成させる予定だ。

「気候変動に関するメルカトル研究所(MCC)」は、パリ協定の目標を達成するには、排出削減対策に加えて、大気中からCO2を除去する必要があると予測している MCC - Mercator Research institute on Global Commons and Climate Change

ブトラー氏によれば、アイスランドだけで、国際的な気候目標の達成のために除去する必要のあるCO₂を全て地下に貯蔵できるという。「アイスランドは、鉱石化によって1.2兆トンのCO₂を貯留するキャパシティーがある(編注:世界の年間排出量のおよそ30倍)。IPCCの提示した量をはるかに超えている」

CO₂回収にはクリーンエネルギーが必要

米マイクロソフトも出資しているクライムワークスのソリューションには、賛否両論があり、疑問を呈する声もある。

20年に発表されたある研究では、DACプラントを再生可能エネルギーだけで稼働させた場合、1億トンのCO₂を回収するには、18年に米国で生産された風力・太陽光発電量の全てが必要になるという。1億トンは、世界の年間CO₂排出量の400分の1にあたる。さらに、施設全体を合わせると、スリランカの国土よりも広い面積を要するという。

ヌーシャテル大学のマルティーヌ・ルブテ気候学教授は、これらの技術の必要性を認める一方で、安全性やカーボンバランス、コストに関してはまだ未知の部分があると指摘する。「今のところ、最も安価で最も早急に行うべき対策は、CO₂の排出自体を止めることだ」と、ニュースサイトのwatson.chに語っている。

スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)の気候科学者のソニア・セネヴィラトネ氏も、「このままゆっくりとCO₂排出量を減らし、技術的なソリューションを待とうと考えている人は皆、間違っている」と述べる。

何もしないことの代償

クライムワークスのブトラー氏も、CO₂の排出を減らすための行動が必要なことは分かっている。「気候変動に対処するためには、それが最も重要なことだ」。だがいつかは緩和策が不可能になったり、例えば航空分野などでコストがかかり過ぎたりして、大気中から温室効果ガスを除去する必要が出てくるだろうと付け加えた。

スイスのCO₂がアイスランドに

スイスは「長期気候戦略」の一環として、農業や特定の産業プロセスなど、CO₂排出の削減が難しい分野での排出を、大気中のCO₂を回収・貯蔵する技術で補おうと計画している。

今年7月、スイス政府はアイスランドと意向表明書に署名し、両国でこのアプローチを支持することを約束した。また、スイスにはまだ深層貯蓄に適した場所がないため、スイスのCO₂をアイスランドに輸出したいと考えている。

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現在、1トンのCO₂を回収して貯留するには約600ドル(約6万6千円)かかるが、将来的には200ドルまで削減できるとブトラー氏は言う。「最も経済的な解決策は、間違いなく木を植えることだ。だが森林だけでCO₂をなくすには、地球が3個分必要だ」

ブトラー氏は、近年の自然災害による甚大な被害を見ても分かるように、何の対策もしないでいることの代償はいずれにしても大きくなると断言する。「コスト面の話だけではなく、ネガティブエミッション技術はチャンスでもある。主要産業の1つになり、多くの雇用を生み出せるだろう。この分野では、今やリーダー的存在となったスイスが先頭に立ち続けるべきだ」

(仏語からの翻訳・由比かおり)

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