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温暖化に苦しむ途上国 求められる国際連帯

サハラ以南の人々にとって、長引く干ばつは地球温暖化の最も過酷な結末の1つだ(写真はソマリランドの女性) Keystone / Mark Naftalin / United Nations D

二酸化炭素(CO2)の主な排出国は先進国だ。しかし、地球温暖化の被害を最も受けている途上国への支援を十分に行っていない。OECDの最新の報告書は、スイスをはじめとする欧州諸国の怠慢を厳しく批判する。

このコンテンツは 2021/03/02 08:30

農夫のベンジャミン・バルガスさんにとって、水は死活問題だ。2018年にボリビアのティキパヤにある彼の農地を訪れた際、バルガスさんは、気候変動によって水不足が深刻化する中、なぜこの貴重な資源を持続可能な方法で管理することが重要なのかを分かりやすく説明してくれた。幸いバルガスさんを含むこの地域の農家は、山腹に作った人造湖で雨水を集められるため、乾季でも畑に水を引くことができる。

スイスの開発援助の一環である同プロジェクトは、気候変動の影響を最も受けやすい地域を対象に行われている。こういった貯水池がボリビアの農民にもたらす恩恵は明らかだ。しかし、スイスを含む先進国が最も貧しい国々を支援するために行っている気候変動対策は、今から10年以上前に約束された内容他のサイトへからは程遠い。

汚染者負担の原則

先進国は2009年の国連気候変動コペンハーゲン会議で、途上国が温室効果ガスの排出を抑制し気候変動に適応できるよう、2020年まで年間1000億ドル他のサイトへ(約10兆円)の資金援助を行うことで合意した。

これは連帯の証であり、何よりも責任に対するコミットメントだ。この原則は気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」にも明記されている。地球温暖化で甚大な被害を受けているのは、それに対する責任が最も少ない貧しい国々だ。そのため温室効果ガス排出の張本人である富裕国は、こういった国々を支援する義務がある。

経済協力開発機構(OECD)が発表した最新の調査他のサイトへによると、2018年に途上国が受け取った気候資金は789億ドル。うち622億ドルが公的資金、146億ドルが民間セクターからの出資だった(残額は輸出金融)。これは2017年比で11%の増加。

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スイスからは5億ドル支援

気候変動対策の公的資金は、主に欧州連合(EU)とその加盟国が提供している。米国からの支援はトランプ前政権下で縮小されたが、バイデン新政権はその差額を補い、今後は積極的に協力他のサイトへする意向を示している。

一方、スイスは2018年に5億5400万ドルを拠出。連邦環境省環境局(BAFU/OFEV)は支援金の配分に関し、各国の経済力とそれに付随する温室効果ガスの排出量を考慮したと説明する。

そのうち3億4千万ドルは、主に国際開発予算から引き出された公的資金だ。民間投資(2億1400万ドル)は、主に国際開発金融機関を通じて供与された。ちなみに、スイスが国際的な気候変動対策に拠出する資金は、国家安全保障への公的支出の約10分の1に相当する。

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気候変動対策資金の流入先は?

2018年、主に気候援助を受けた国はアジア(43%)で、アフリカ(25%)、南米(17%)が続く。スイスから最も多く支援を受けた国はボリビア、ペルー、インドネシアだ。

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2018年に配分された気候変動対策資金の約7割は、再生可能エネルギーの生産プラント建設など、気候変動の緩和に貢献するプロジェクトに使用された。一方、各国が気候変動へ適応できるよう支援するプロジェクトに供与された資金は2割にとどまる(残りの1割は分野横断的なプロジェクトに使用)。

様々なNGOはこの不均衡を批判し、最も脆弱な国々が地球温暖化の影響に適応するための支援にもっと資金を回すべきだと訴える。海面上昇の脅威にさらされ、緊急の対策が必要な小さな島国のことを思えば、それは明白だ。

だが、気候変動の資金メカニズムをめぐる批判はまだ他にもある。

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スイスと欧州からの「公平な配分」

キリスト教会と連携する人道支援機関のネットワーク「ACTアライアンスEU」が1月中旬に発表した報告書他のサイトへによると、EUとその加盟国からの2019年気候変動資金は合計270億ドルに達した。しかし本当に「公平な配分」であれば、欧州からの資金は330億~360億ドルにのぼるはずだと同団体は主張する。

スイスの国際開発機関6団体で構成される「南同盟(Alliance Sud)」のユルク・シュタウデンマン氏は、諸外国が受けている気候変動の影響を考慮すると、スイスは開発協力への貢献を10億ドルに増やすべきだが、貧困対策を犠牲にして開発協力予算から資金を引き出すことは「皮肉」であり、有害だと述べた。

気候変動とは無関係のプロジェクトを計上?

また、英国のオックスファムを含む多くのNGOは、気候資金は過剰計上されており、実際は先進国が報告している金額の3分の1他のサイトへに過ぎないという。この不一致には、基本的に2つの理由がある。

1つ目は、プロジェクトの気候要素の計算方法に不正確さ(誇張)がある点だ。例えば、ソーラーパネル付きの建物を建設する場合、パネルの設置費用だけではなく、建築物全体の費用が報告されている。

開発支援活動を行うNGO「ケア・インターナショナル」の最近の報告書他のサイトへによると、日本も主な「違反者」に名を連ねる。日本は気候変動とは無関係のプロジェクト(総額13億ドル以上)を行っており、それにはベトナムにおける橋や高速道路の建設などが含まれる。また南同盟はドイツの調査から、スイスが資金提供した3つのプロジェクトも気候変動との関連性が明らかではないと指摘している。

2つ目に、直接援助という形で提供される資金の割合はわずか2割である点が挙げられる。先進国は、融資(中・長期的に返済が求められ、商業的な金利と同等の場合もある)や、その他の金融商品に頼るケースが増えているとオックスファムは非難他のサイトへする。スイスはオーストラリア、オランダ、スウェーデンと並び、資金の大半を助成金という形で提供している数少ない国の1つだ。

最も寛大な国はどこ?

ACTアライアンスEUは、融資を除く直接援助と国富のみを考慮すると、最貧国が気候変動に対応できるよう欧州諸国が行っている支援の「真の姿」が見えてくるという。

この計算方法だと、最も寛大な国はスウェーデンだ。ドイツ、ノルウェーと並び、国民総所得の0.1%以上を気候変動対策資金に充てている数少ない国の1つだ。スイスは0.048%で9位にランクインした。

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訂正)2021年2月17日、オックスファム・ドイツのヤン・コヴァルツィック氏からの連絡を受け、助成金の利用に関する文章からEUに関する箇所が削除された。同氏はメールで「2018年に報告された気候資金の半分以上が、欧州投資銀行を経由した融資、株式、非助成金の形で提供された」と明らかにした。

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