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汚職や資金洗浄疑惑 罪に問われぬスイス企業

ジュネーブに拠点を置く先物企業グンヴォールは2019年、汚職やマネーロンダリング(資金洗浄)事件に関与したとして有罪判決を受けた。スイス企業で同じように有罪判決を受けた企業はわずかしかない Keystone / Martial Trezzini

国際的な汚職やマネーロンダリング(資金洗浄)事件に関与したとして、スイス企業が紙面を賑わすことは度々ある。しかし、実際に有罪判決を受ける企業は一握りしかない。国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)のスイス支部は、法整備や司法制度の不備を指摘する。

このコンテンツは 2021/10/16 09:00

汚職撲滅に関して世界をリードするTIは3月に発表した報告書「企業の刑事責任」他のサイトへで、スイス企業が罪に問われない状況に終止符を打つべきだと訴えた。スイスは2003年に企業の責任条項を導入した(刑法第102条)。これにより、汚職やマネーロンダリングを防止するための合理的で必要な措置を講じないことは重い犯罪行為とみなされ、対策を取らない企業は処罰されることになっている。

報告書によると、スイス企業はこの種のスキャンダルに関与することが多いが、有罪判決となったケースは20年間でわずか8件しかない。

最近の事例としては、ジュネーブに拠点を置くグンヴォール社が19年に有罪判決を受けたケースがある。連邦検察庁は同社に総額9400万フラン(約115億円)の罰金を科した。金額の内訳は、同社がコンゴ共和国およびコートジボワールで汚職事件に関与したことへの罰金400万フランと、同社が疑惑事件で手にした利益総額の相当分9000万フランだった。

ザンクト・ガレン大学の16年報告書と、クール応用科学大学の12年報告書によると、国外で活動するスイス企業の約2割が汚職関連の問題を抱える。その企業数に比べて有罪判決の件数はごくわずかなのは、スイスの刑法規範が緩く、その適用に不備があるためだとTIは指摘する。

フランスは模範国

TIスイス支部のマルティン・ヒルティ代表は「スイスは近隣諸国に比べて、規制をあまり強化させてこなかった」と語る。スイスの現行法やその執行状況では、企業は自ら罪を申告して司法当局に協力する動機に欠けるという。

しかし、特に大きな国際事件の場合、企業からの協力がなければ証拠を集めるのは難しいと同氏は考える。「企業が自首し、協力することがなければ、企業の責任を追及することは困難だ」

「スイスは近隣諸国に比べて、規制をあまり強化させてこなかった」

マルティン・ヒルティ、トランスペアレンシー・インターナショナル・スイス支部代表

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TIは報告書で、優れた取り組みを行っている国としてフランスと英国を挙げた。フランスには、告発された企業が検察との司法取引に合意すれば裁判を回避できる法律がある。ただ、企業が司法取引をするにはコンプライアンス・プログラムの遵守など一定の義務を果たす必要がある。同法が16年に施行されて以来、いくつものフランス企業があらゆる種類の犯罪で有罪判決を受けてきた。

悪循環を断ち切る

TIは、スイスもこの例に倣うべきだと主張する。特に、自首した企業に罪を問わないのは妥当な措置だと考える。

また立法機関と検察は法廷外での司法取引制度を整えるべきだという。「プロセスがどのように進み、どれほどの時間がかかり、何が期待できるのかをしっかり把握できれば、企業は問題解決に関心を持つだろう。企業が汚職の悪循環に陥っていることは多い」(ヒルティ氏)

今の罰則に抑止効果がほとんどない点も問題だ。TIは罰金の上限を500万フランに引き上げ、有罪判決を受けた企業を犯罪者登録簿に登録すべきだと主張する。

TIは当局の行いに透明性が欠けている点も問題視する。これまでの有罪判決は、すべて密室裁判で下されてきたという。

密室裁判はスイスにおけるすべての裁判の9割を占める。公判ではなく略式命令で判決を下す形で、迅速で費用を抑えられるという利点がある。だが、密室裁判は透明性の原則に反するとTIは考える。

改革プロセスは難航

企業の責任条項が施行されて以来、連邦議会では企業責任を巡る議論が定期的に繰り広げられてきた。しかし、刑法規範を拡大する案はすべて否決された。

連邦検察庁は、連邦議会で刑法改正が取り上げられたことを受け、18年に「企業への起訴猶予」という新たな手段を提言した。これは、企業への起訴を一定期間停止することが裁判外で合意できるというものだ。

企業が取り決められた期間内に連邦検察庁に対して義務を果たすことができれば、訴訟手続きの中止が可能になる。そうでない場合は、連邦検察官が企業を起訴する。連邦政府直属の連邦検察庁がこのような提言をしたものの、連邦政府は19年8月の刑法改正にそれを反映させなかった。

(独語からの翻訳・鹿島田芙美)

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