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普遍的管轄権行使の事件、コロナ危機でも増加

2014年の国連安全保障理事会で、シリアでの戦争犯罪を国際刑事裁判所に付託する決議案に拒否権を発動したロシアと中国の代表 Keystone / Justin Lane

普遍的管轄権を行使する裁判が世界中で増えている。ジュネーブのNGOは、国際犯罪の犠牲者に正義をもたらす戦いは終わっていないと話す。

このコンテンツは 2021/05/10 00:45
RTS/swissinfo/dbu

普遍的管轄権を行使し戦争犯罪を裁く試みは、新型コロナウイルス(COVID-19)危機下でも停滞していない。ジュネーブのNGOトライアル・インターナショナルは年次報告書で、裁判の件数は増加したと指摘した。

同NGOのエグゼクティブディレクター、フィリップ・グラン氏は仏語圏のスイス公共放送(RTS)に「4年前は12カ国、事例数は約30件だった。それが現在では約18カ国で150人の容疑者が逮捕、勾留、または公判中だ」と語った。

同団体は、普遍的管轄権を行使し戦争犯罪を裁く活動を推進。先月、世界の実施状況をまとめた年次報告書を発表した。

普遍的管轄権はジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する罪など、深刻な国際犯罪の容疑者を逮捕した国が、発生場所や容疑者の国籍にかかわらず訴追できる権利だ。スイスも国内法に適用している。

ドイツの裁判所が2月、人道に対する罪に関わったとしてシリアの元諜報員に懲役刑の有罪判決を言い渡し大きく報じられたが、これも普遍的管轄権を行使した事例だ。バッシャール・アル・アサド政権当局者を戦争犯罪・人道への罪で訴追する動きの中で、大きな転換点となる司法判断だった。

普遍的管轄権の行使は、コロナのパンデミック(世界的大流行)でも減ることはなかった。ただ当局側は捜査手法の変更を余儀なくされた。グラン氏によると、トライアル・インターナショナルのようなNGOは現場での証拠収集が仕事の一部だが、今やオンラインで多くの有用な情報を見つけることができる。同氏は「シリア、ミャンマー、その他の地域で今起こっている紛争は、歴史上最も文書化されている」と説明する。

普遍的管轄権は、発生国の司法が機能しない場合にも行使が可能だ。グラン氏は、特にハーグの国際刑事裁判所(ICC)が法的権限を持たない場合、あるいはシリアのように、国連安全保障理事会でICCに事件を付託する決議案に対し拒否権が発動された場合に効果を発揮する。

スイスの場合

スイスでは、リベリアの元反政府勢力指導者アリュー・コシア被告が、第一次リベリア内戦(1989~1996年)中の戦争犯罪に問われ公判中だ。これは普遍的管轄権を行使し、スイスの文民の裁判所で公判が開かれた初のケースとなる。審理は3月5日、ベリンツォーナの連邦刑事裁判所で結審。まもなく判決が出る予定他のサイトへだ。

だがグラン氏は、スイス連邦検察庁に「戦略的ビジョン」がなく、国際犯罪に鉄槌(てっつい)を下す機会を往々にして逸していると指摘する。同氏はリソースが限られていることが残念だとし、「検察当局に与えられた手段を明確に強化」するよう求める。

それでも、今後に関しては楽観的な見方だ。同氏は「解決策は、正義を求める被害者の勇気の結集、NGOの市民参画、前に進むための人的資源を持つ捜査官、検察官との協力から生まれると信じている。将来、より多くの加害者、そしてもっと重要な加害者が確実に責任を問われるようになるには、こうした要素の結集が重要なカギとなる」と話す。

(英語からの翻訳・宇田薫)

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