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国際都市ジュネーブ

変貌する国際都市ジュネーブ

国際機関が集まり、多国間主義の重要なハブである国際都市ジュネーブが大きな圧力に直面している。新型コロナウイルス感染症のパンデミックで会議の大半がオンラインで行われるようになり、国際都市ジュネーブはかつてない試練と向き合っている。

Skizzomat(イラスト)

国際機関の中でもパンデミックで特に注目を浴びたのが世界保健機関(WHO)と世界貿易機関(WTO)だ。

世界が感染対策に苦慮する中、WHOには危機対応への批判や組織改革を求める声が相次いだ。WHOは一貫してワクチンの公平な分配を訴えてきたが、富裕国の買いだめはなくならず、一部の発展途上国では医療関係者ですらワクチン接種を受けていない。

2021年12月に開かれたWHOの特別会合で、加盟国は次なるパンデミックに対応するための新たな条約作りに向け、議論を行うことで合意した。だが準備に少なくとも3年はかかりそうだ。

ジュネーブに本部があるWHOは1948年に設立。全ての人が必要な時に基礎的な保健医療サービスを受けられる環境づくりを促進するほか、国際基準を定め、公衆衛生上の緊急事態に対する国際的対応を調整することが同機関の役割だ。

WHOは資金問題にも直面している。

WHOは、新型コロナウイルス感染症ワクチンを開発途上国に提供するイニシアチブ「COVAX(コバックス)」を立ち上げた。COVAXはWHO、Gaviワクチンアライアンス、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)が共同で主導する。しかしワクチン供給量不足により、何度も目標の下方修正を余儀なくされた。

WTOとワクチン

ジュネーブに本部があるWTOもまた、組織改革を求める声に直面している。同組織で昨年、最も賛否の分かれた議論の1つが、やはりワクチンの不平等分配を巡る内容だった。

WTOは164カ国が加盟。長い交渉の歴史を持つ。

2021年には、女性として、またアフリカ人では初めての新事務局長にナイジェリアの元財務相ンゴジ・オコンジョ・イウェアラ氏が選ばれた。

「肥沃なエコシステム」

ジュネーブには国連欧州本部、40以上の国際機関に加え、700超の政府機関や学術機関、177カ国・地域の外交使節団が集まる。

国連では最近、国際司法調査官と専門家によるチームがシリア、ミャンマー、スリランカで発生した深刻な国際犯罪に対し、証拠収集と保存、そして刑事訴追の可能性を模索している。

国連組織や各国政府代表に加え、多くの国際NGOや学術機関が集まる国際都市ジュネーブ。それがこの都市に国際的な研究と政策決定の「肥沃なエコシステム」をもたらす。一部のNGOや国連でさえ、パンデミックの連鎖反応に脅かされているのかもしれないが、スイス連邦政府はスイス・デジタルイニシアチブやジュネーブ・サイエンス・ディプロマシー・アンティシペーター財団(GESDA)などの革新的・未来的なジュネーブの「プラットフォーム」を支援している。GESDAは進歩的な新興企業が集まる「バイオテック・キャンパス」内にある。

GESDAは2019年に設立。スイス政府、ジュネーブ州、ジュネーブ市が資金提供する。2021年10月に初のサミットを開き、これまでの取り組み内容を初めて公開した。

平和、人権、国際正義は依然、重要な焦点だ。国連内の政府間組織である人権理事会と、多数のNGOや研究者に支えられた人権高等弁務官事務所が、ジュネーブから世界中の人権を促進し、保護している。

パンデミック時代のデジタル外交

国連欧州本部があるパレ・デ・ナシオンの廊下と会議室は、以前は各国の代表や報道機関でにぎわっていた。しかし、コロナに伴う1回目の部分的ロックダウン(都市封鎖)が敷かれた2020年春は、ほぼがらんどうの「主(ナシオン)のいない宮殿(パレ)」に変わってしまった。国連活動の多くは今もなお、オンラインで行われている。ジュネーブにある多くの国際機関も同様だ。働き方はパンデミック後でさえも変わるかもしれない。

資金確保はジュネーブの国際機関にとって大きな悩みの種だ。国連システムの限界が試されたパンデミックで、財政問題は深刻化した。国連機関、国際機関、NGOはコロナによる制限措置の中で資金確保に苦慮した。

長期的な傾向としては、大規模な国際機関が特定のリソースを高物価のジュネーブから別の安価な場所に移すかもしれない。だが、ジュネーブにはそれを上回るプル要因(引き付ける要素)があるという。1つは資金を提供するドナー、政策決定者、専門家が既に揃っているということ。ジュネーブ州のウェルカムセンター(CAGI)の責任者ジュリアン・ボーヴァレ氏は「国連と国際システムが市民社会に開かれている限り、ここジュネーブにはプル要因がある」と話す。

2022年の焦点

2022年、国際都市ジュネーブの焦点は、引き続き新型コロナウイルスのパンデミック、脱コロナ禍に向け世界を導くWHOの取り組み、そして次のパンデミックのより良い管理に向けた準備となる。swissinfo.chはWHOとWTOの組織改革への訴えにも注目する。どちらも春に重要な会合が開かれる予定だ。ジュネーブが世界の人権に対し中心的役割を担っていることも忘れてはならない。スイスで最も有名な人道支援団体である赤十字国際委員会(ICRC)は史上初の女性委員長を任命した。2022年10月に就任するミリアナ・スポリアリッチ・エッゲー氏だ。swissinfo.chは今後、同氏の戦略や課題についても報じていく。

(英語からの翻訳・宇田薫)

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