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国際的に注目される6月13日のスイス国民投票

スイスの気候政策、有権者は方向転換を選ぶか

今回の改正二酸化炭素(CO2)法では、スイス発の航空券に課税する項目が初めて盛り込まれた © Keystone/ Valentin Flauraud

スイスの有権者は6月13日の国民投票で、国の環境政策を大きく左右する決断を迫られる。投票では、改正二酸化炭素(CO2)法の是非が問われるからだ。温室効果ガスの排出削減を巡っては、経済界でも環境保護派の間でも意見が分かれる。

このコンテンツは 2021/05/16 06:00

ある1つの危機が、他の危機を覆い隠してはいけない。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)に気を取られて、より深刻で長期的な影響を及ぼす気候変動から目をそらしてはいけない――。世界中の団体や政治家、若者たちはそう警告する。

コロナ禍による景気低迷で、昨年は世界の温室効果ガス排出量が減少したが、再び増加に転じている。今すぐに決定的な方向転換を行わない限り、地球温暖化を2度以下に抑えるという目標はさらに遠ざかるだろう。

6月13日の国民投票は、スイスにとって方向転換のチャンスだ。有権者はこの日、連邦政府が策定し、議会で既に可決された改正CO2法の是非を判断する。

改正法の内容は?

全面改正されたCO2法他のサイトへは、2020年以降の国の温室効果ガス排出削減について定めた重要な法的基盤だ。パリ協定の下、スイスは排出量を30年までに1990年比で半減する。長期的には、連邦政府は2050年までにカーボンニュートラル(炭素中立)を実現する。

改正法には道路・航空交通や経済、ビル・家屋改築に関する規定を盛り込んだ。特に重要なものは以下の通りだ。

  • スイス発の航空券に、30~120フラン(約3600~1万4400円)の航空チケット税を課す
  • 自動車輸入業者に対し、よりエネルギー効率の良い自動車の販売を義務付け
  • 輸入業者が徴収するガソリン・軽油のサーチャージを、1リットル当たり0.05フランから0.12フランに引き上げ
  • ディーゼルにかかるCO2税を、CO2排出量換算1トン当たり120フランから210フランに引き上げ
  • ビルや家屋について、化石燃料を使った暖房によるCO2排出量の上限を定める

また改正法は、排出量の75%を国内で削減するよう定めている。残りは国外の措置で相殺可能とする。

他国と比べたスイスの位置づけは?

世界61カ国の地球温暖化対策を比較した2021年のランキング「気候変動パフォーマンス・インデックス(CCPI)」で、スイスは14位だった。

指標はドイツの環境NGOジャーマンウオッチが毎年公開。同団体は、スイスは昨年から順位を2つ上げたものの、現在の取り組みでは、地球温暖化を明らかに2度以下に抑える目標を達成できないと述べた。

特に批判の対象となっているのは、農業分野での対策の欠如や、外国の温暖化対策プロジェクトに資金を提供することで排出量の一部を相殺しようとしている点だ。

賛成派の主な論点

賛成派は、改正法は実証された措置に基づいており、スイスが国際的な義務を果たすことができると主張。氷河は急速に融解し、真夏日や干ばつが頻繁になり、洪水や地滑りなどの自然災害の規模が拡大するなど、スイスにおける地球温暖化は誰の目にも明らかな現実だ、と訴える。

また賛成派は、改正法によって輸送・建設部門における環境に優しい代替案の競争力が高まるとメリットを訴える。投資や雇用が確保されれば、スイス経済にも大きなチャンスをもたらす。例えばスイスは輸入化石燃料に毎年約80億フランを拠出するが、これを気候保護に回せる。

CO2税、航空チケット税などの税収の一部は直接国民に還元されるため、国民にも利点があるという。

反対派の主な論点

反対派は、改正法は非効率的で、官僚主義や禁止事項を増やし、企業や家庭の大幅なコスト増につながると主張する。

特に光熱費が増え移動性が低下するとし、4人家族の場合、光熱費が年間1千フラン増えると試算する。

反対派はまた、スイスには既に厳しい環境・気候保護の規定があり、化石燃料の使用をこれ以上減らしても気候にはほとんど影響を与えないと主張する。そして化石燃料が進歩を促し、貧困を減らしたことは明らかであり、連邦政府が本質的に貢献できるのは、市場経済システムにおける研究とイノベーションのための枠組を整えることだけだとアピールする。

反対派の中には、改正法が地球温暖化対策としては不十分で、効果的な気候保護を実現できないという意見もある。

国民に発言権があるのはなぜ?

改正CO2法は昨年9月、連邦議会で可決された。前年の選挙で緑の党が勢いを増したことが後押しした。約3年間の審議を経て、議会は政府目標よりも野心的な内容で合意した。

これを受け、超党派の経済委員会は改正法に反対するレファレンダムを提起。署名活動には、気候活動家らでつくる別のレファレンダム提起委員会も加わり、100日足らずで必要最低数の5万筆を大きく上回る11万筆以上の署名を集めることに成功した。

スイスの直接民主制において、連邦議会で可決された新法に国民が拒否権を行使できるレファレンダムは、イニシアチブ(国民発議)に次いで重要な国民の権利だ。

反対派と賛成派の顔ぶれは?

連邦議会における最終投票では、右派・国民党以外の全政党が新法に賛成した。

CO2法のためのスイス経済委員会(大企業やエネルギー会社、建設、銀行、保険などの傘下組織を含む)、経済連合エコノミースイス(economiesuisse)、スイス気候同盟、グリーンピースなどの環境団体、そして気候変動ストライキ運動に携わった多数の州セクションだ。また連邦政府も法改正を支持している。

一方、反対しているのは石油、運輸、航空、建設業界の代表者でつくる「CO2法に反対する経済委員会」だ。フランス語圏の気候活動家らによるもう1つのレファレンダム提起委員会は、より抜本的な気候対策を求めている。

スイス商工業連盟は、レファレンダム成立に向けた署名活動を支持していたが、改正法への賛否は明らかにしていない。

(独語からの翻訳・シュミット一恵)

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