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LGBTIQの平等な権利、遅れを取り戻すスイス

スイスで同性婚合法化可決、レインボーファミリーはどう受け止めた?

リーヒティさん一家。サラさん、シモーナさんが心から安心できるのは、2人が法的に1歳の娘アンブラちゃんの母親だと認められた時だ Daniel Rihs

スイスでは昨年末、同性婚の合法化案が議会で可決された。レズビアンカップルのリーヒティさん一家は、全ての人に等しく結婚の権利が与えられ、幸せな生活を営める社会が来ることを願っている。

このコンテンツは 2021/02/13 06:00

「ついに、サラが法的に私の妻になることができる。言葉でいうより、ずっとロマンチックですよ」。シモナ・リーヒティさん(37)がそう言ってにっこりと笑う。サラさんとシモナさんは、法定婚に代わるパートナーシップ登録をしている。

弁護士のシモナさんは、スイスが欧州の西側諸国に比べてはるかに遅れていると不満を漏らす。これらの国の大半では、すでに同性婚が合法化されているからだ。

スイス議会が昨年12月に可決した同性婚合法化案には、保守政党が法案に反対するレファレンダムを提起した。必要な署名を集め、レファレンダムが成立すれば国民投票が実施される(下のボックスを参照)。同性婚の合法化は、同性カップルにとって象徴的な価値を持つだけでなく、同性カップルを家族に持つ「レインボーファミリー」により良い法的保護を保障することにもつながる。

コペンハーゲンの精子バンク

シモナさんとサラさんが同性カップルのパートナーシップ制度に登録したのは2016年。婚姻とほぼ同等の権利が保障されるが、スイスの法律はシモナさんらのようなカップルに対し、国内で生殖補助医療を受ける権利を認めていない。このため子供が欲しかった2人はデンマーク・コペンハーゲンの精子バンクに頼った。

デンマークでは、レズビアンカップルは以前から生殖補助医療の利用が認められている。シモナさんは「それに加えて、娘が18歳になったとき、ドナーの身元を知る機会を保障する法律があった。それが決め手になりました」と話す。

コペンハーゲンに何度か足を運び、シモナさんは妊娠。2人は「これがもしスイスで、身近な環境でできたなら、もっと良かったと思う。プロセスそのものはとても感情がこもるものだし、そのために国外へ行かなければならないのはストレスが溜まる」と話す。

また、国内では認められていないことを可能にするために、国外まで足を運ばなければいけないというのは妙な感覚を覚えたという。サラさんは「たとえそれが違法でなくても、嫌な後味が残った」と振り返る。

「全ての人に結婚の自由を」の反対派は?

同性婚の合法化案「全ての人に結婚の自由を」には2つのグループが反対しており、レファレンダムを提起して国民投票に持ち込む構えだ。

超保守派の小政党スイス民主同盟(EDU)は数カ月前、法改正に反対するレファレンダムを提起すると発表していた。

また12月末には、保守派の国民党(SVP)とキリスト教民主党(CVP、2021年1月1日に中央党に改称)の所属議員らが2つ目のレファレンダム提起委員会を立ち上げ、署名集めを始めた。今回の法改正の中で、レズビアンカップルへの精子提供を認める点を特に問題視しており「生殖補助医療へのアクセスに焦点を合わせ、EDUらの議論と差別化を図る」としている。

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子供の法的保護の欠如

アンブラちゃんはプレイマットの上に座り、手にした電子時計で遊んでいる。両親がいずれも女性であることは、アンブラちゃんには何の問題もないことだ。

だが法律の観点からは、状況が異なる。アンブラちゃんは異性カップルの子供と同等の保護が受けられない。シモナさんは「法的には、アンブラの母親は私1人だけ。私に何かあった場合、法律上は彼女は孤児になってしまう」と憤る。

生殖補助医療を受けるため、カップルはコペンハーゲンまで足を運んだ Daniel Rihs

この法律の不備はあるにせよ、シモナさんが亡くなっても、アンブラちゃんはおそらくサラさんと暮らせる可能性は高いという。だが「一定の不確実性は残ります。2人ともアンブラの母親だと法的に認められる日が来るまでは、心から安心できません」とシモナさんは話す。

しかし、サラさんが法的にアンブラちゃんの2人目の母親と認められるためには、長いプロセスを経なければならない。養子縁組手続きを始めるのにも、アンブラちゃんが1歳の誕生日を迎えた12月25日まで待たなければならなかった。それが決まりだからだ。

手続きでは、たくさんの書類に記入しなければならない。長く、費用がかかるプロセスだ。サラさんは 「例えば、自分の娘とどのような関係なのかを説明しなければならない。ばからしいですよ」と憤る。

「例えば、自分の娘とどんな関係なのかを説明しなければならない。ばかげている」

サラ・リーヒティ

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「全ての人に結婚の自由を」が施行された場合、レズビアンカップルは生殖補助医療が利用できるようになる。パートナーの双方とも子供の出産と同時に親とみなされるため、精子提供を受けるため国外に出ていく必要がなくなり、養子縁組もしなくて済むようになる。

しかし、国外での生殖治療を選択する人は、これまで通り養子縁組手続きが必要となる。ここが、LGBTIQの権利支援団体の批判する点だ。

法律の遅れ

専門家によれば、スイス国内にいる約3万人の子供が、少なくとも親の片方が自分をゲイ、レズビアン、バイセクシュアル、またはトランスジェンダーと見なすレインボーファミリーで育っているとされ、国内法はこうした社会の現状に追いついていないと指摘する。人々の意識も同様で、リヒティさんは「多くの人は、私たちに婚姻の権利がないことを知らない」と話す。

アンブラちゃんが生まれてから1年。リヒティさん一家は抵抗や差別を受けることなく過ごしてきた。あるとすればわずかに不快感を感じたくらいだ。サラさんは「アンブラの最初の検診の時、小児科医から叔母さんですか、と聞かれました」と笑う。

シモナさんとサラさんは母親として存分に愛情を注ぎ、その生活を楽しんでいる。だが、スイスはLGBTIQコミュニティの権利に関してまだ多くの改善点が必要だと言う。サラさんは 「トランスジェンダーの人々の状況は依然として厳しい。トランスジェンダーに対する社会の意識は、15年前の同性愛に対するものとほぼ同じレベルだと思う」と話す。

サラさんが法律上のアンブラちゃんの母親になるには、養子縁組を経なければならない Daniel Rihs

「アンブラがことあるごとに、パパはどこ?って聞かれないよう願っています」。サラさんはそう言って、愛娘のほおにキスした。まだ何も知らないアンブラちゃんは、ほおに小さな赤いキスマークを付けて嬉しそうに笑う。サラさんは「母親が2人だと、口紅のキスマークも2倍に増えるんですよ」と冗談交じりに笑った。

(独語からの翻訳・宇田薫)

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