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絶滅危惧種を守る新たなツール「グリーンステータス」

コモドオオトカゲは生き残れるのか:IUCN絶滅危惧種レッドリスト最新版では危険度が「危急」から「危機」に引き上げられた Andrey Gudkov / Biosphoto

国際自然保護連合(IUCN、本部・スイス)は、絶滅の危機に瀕した野生動植物の保全状況をより包括的に評価するために、新たな国際基準「グリーンステータス」を導入する。この新ツールで何が変わるのか。開発に携わった英オックスフォード大学の研究者、モリー・グレースさんが解説してくれた。

このコンテンツは 2021/09/17 09:30

9月3日から11日まで仏マルセイユで開催されていた世界自然保護会議で、「IUCN(国際自然保護連合)他のサイトへ絶滅危惧種レッドリスト」の更新版が発表された。それによると、現在絶滅の恐れがある種は、IUCNが評価した13万8374種のうち3万8543種、つまり4分の1以上(28%)に上る。

IUCNレッドリストは、自然保護活動家や意思決定機関の間で非常に重要なツールとしてすっかり定着した。しかし、絶滅危惧種が直面する脅威と保全活動をさらに包括的に把握するため、10年前から科学者らが共同で、新しい国際基準「種のグリーンステータス」の開発を進めてきた。IUCNによる自然保護地区の認定制度「グリーンリスト他のサイトへ」とは別の仕組みだ。

swissinfo.ch:「IUCN絶滅危惧種レッドリスト」といえば多くの人が知っています。今回IUCNが新たに導入する「グリーンステータス」は、これとどう違うのですか?

モリー・グレース:レッドリストは、ある種が直面する絶滅リスクを記載するもので、保護すべき種を査定するための重要なツールとなっています。しかし、絶滅を防ぐことは最初の一歩に過ぎません。最終的な目標は、その種が回復して繁栄し、生態系における機能を十分に発揮できるようになることです。グリーンステータスは、過去及び将来の保全活動の効果や種の回復レベルを評価することで、レッドリストを補完するとともに保全活動にポジティブな見通しを与えてくれます。

国際自然保護連合(IUCN)で「種のグリーンステータス」コーディネーターを務める英オックスフォード大学研究者のモリー・グレースさん Università di Oxford

swissinfo.ch:新ツールの仕組みを教えてください。

グレース:1つの種に対し、人間の活動による影響を受ける前と現在の個体群のサイズ及び分布を比較し、その結果を0〜100のスコアで評価します。0ならばその種は絶滅、100ならば完全に回復したという意味になります。

これまでに181種の評価を終えましたが、総数はおよそ16万種。まだまだ多くの仕事が残っています。

swissinfo.ch:グリーンステータスはどう役立つのか、具体例を教えてください。

グレース:例えばカリフォルニアコンドルはIUCNレッドリストで1994年から「深刻な危機」に分類されています。しかし、そのグリーンステータスを評価してみると、保全プログラムが継続された場合には完全回復のほぼ75%という力強い回復が望めることが分かりました。

ジャイアントパンダのケースも興味深いでしょう。更新されたレッドリストでは「絶滅危機」から1段下の「危急」カテゴリーに移行しました。しかし、種の状況が改善したことで、保全活動で優先されなくなる可能性があります。グリーンステータスのおかげで、保全活動の成功を喜ぶと同時に、努力を止めれば状況は劇的に悪化するという警告を発することができるのです。

オランダ・レーネンのアウエハンツ動物園で好物の笹を食べるジャイアントパンダのシンヤー。2017年 Keystone / Remko De Waal

swissinfo.ch:グリーンステータスはスイスで絶滅が危惧される種の保全にも役立ちますか?

グレース:もちろんです。私たちが扱った中でスイスにも生息している種はハイイロオオカミです。レッドリストでは「低懸念」のカテゴリーに分類されていますが、グリーンステータスでは「広範に枯渇」としました。私たちの分析によると、保全活動を行わない場合はスイスを始め欧州のハイイロオオカミの数はどんどん減っていくはずです。

絶滅危惧種

現在、絶滅の危機に瀕している種は3万8500種以上に上る。これは国際自然保護連合(IUCN)が評価した約14万種のうちの28%に当たる。哺乳類の26%、両生類の41%、鳥類の14%、サンゴの33%、針葉樹の34%に絶滅の恐れがある。

最近、状況が悪化している種の代表例はコモドオオトカゲだ。また、サメやエイも乱獲や気候変動の影響を受け減少している。

一方、IUCN報告によると、商業的に漁獲される4種のマグロ類には回復傾向がみられた。

スイスでは9月7日、昆虫に関する初の詳細な政府報告書が発表され、国内に生息する昆虫約1千種のうち、およそ6割が絶滅の危機にさらされているか、そうなる可能性があることが明らかになった。

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swissinfo.ch:これまで最も効果があったのはどの保全活動でしたか?

グレース:回復に至った良い例として、きれいな水を必要とするサナエトンボ(Stylurus flavipes)があります。このトンボは、河川や水域の汚染により激減したものの、ここ数十年は欧州連合(EU)が効果的な規制を打ち出したことから水質が改善され、今では完全に回復したとされています。

大きな成果を上げることのできた保全活動は総じて、できるだけ多くの利害関係者に参加してもらい、人間のニーズに配慮しています。人間と野生生物の間で妥協点を見つけられない場合に損をするのは、大抵、野生生物の側だからです。

swissinfo.ch:シベリアトラ、スマトラサイ、アジアゾウなどの種に絶滅の恐れがあることはよく知られています。他に、人に知られていないような絶滅危惧種はありますか?

グレース:一般に、菌類はあまり関心を集めません。保全活動でも置き去りにされがちです。しかし、菌類は養分循環に重要な役割を果たしています。

動物ではダーウィンハナガエル(Rhinoderma darwinii)、オーストンヘミガルス(Chrotogale owstoni)、角のために狩られるサイガ(Saiga tatarica)が挙げられます。たとえ聞いたことのないような種であっても見過ごすわけにはいきません。あらゆる種は、私たちにとって大切な生態系のバランスを維持する上で何らかの役割を果たしているのです。

(英語からの翻訳・フュレマン直美)

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